工程管理の教科書に必ず登場する「クリティカルパス法(CPM)」。施工管理技士の試験にも出ますが、実務で正しく使いこなしている現場は多くありません。
「工期が遅れそうだが、どこを集中管理すればいいか分からない」——この問いに答えるのがCPMです。
基礎から計算例まで、建設現場での使い方を整理します。
クリティカルパス法(CPM)とは
CPM(Critical Path Method)は、プロジェクトの全工程を分析し、「工期を決定する最長経路(クリティカルパス)」を特定する手法です。
1950年代にデュポン社が化学プラント建設で開発した手法が起源で、現在は建設業を中心に広く使われています。
CPMの基本的な考え方
- 全工種を矢印(または箱)でつなぎ、依存関係を図示します
- 各工種の所要日数を設定します
- 開始から完了までの全経路を計算し、最も長い経路を「クリティカルパス」とします
- クリティカルパス上の工種が1日遅れると、工期が1日延びます
CPMの基本計算
用語の定義
| 用語 | 英語 | 意味 |
|---|---|---|
| ES | Earliest Start | 最早開始時刻:最も早く開始できる時刻 |
| EF | Earliest Finish | 最早終了時刻:最も早く終了できる時刻 |
| LS | Latest Start | 最遅開始時刻:工期を守るための最終開始時刻 |
| LF | Latest Finish | 最遅終了時刻:工期を守るための最終終了時刻 |
| TF | Total Float | 全余裕(トータルフロート):遅れが許される最大日数 |
| FF | Free Float | 自由余裕(フリーフロート):後続工種に影響しない余裕日数 |
TF = 0 の工種がクリティカルパス上にあります。
計算の流れ
ステップ1:フォワードパス(前向き計算)
左から右へ、ES・EFを計算します。
EF = ES + 作業日数
次の工種の ES = 前工種の EF(複数の前工種がある場合は最大値)
ステップ2:バックワードパス(後ろ向き計算)
右から左へ、LF・LSを計算します。
LS = LF - 作業日数
前の工種の LF = 後続工種の LS(複数の後続工種がある場合は最小値)
ステップ3:フロートの計算
TF = LS - ES = LF - EF
TF = 0 → クリティカルパス
計算例
以下の工事を想定します。
| 工種 | 所要日数 | 先行工種 |
|---|---|---|
| A:仮設工事 | 5日 | なし |
| B:土工事 | 10日 | A |
| C:基礎配筋 | 8日 | B |
| D:基礎型枠 | 6日 | B |
| E:基礎コンクリート打設 | 3日 | C, D |
| F:躯体工事 | 20日 | E |
フォワードパス
A: ES=0, EF=5
B: ES=5, EF=15
C: ES=15, EF=23
D: ES=15, EF=21
E: ES=max(23,21)=23, EF=26
F: ES=26, EF=46
工期 = 46日
バックワードパス
F: LF=46, LS=26
E: LF=26, LS=23
C: LF=23, LS=15
D: LF=23, LS=17
B: LF=min(15,17)=15, LS=5
A: LF=5, LS=0
フロートの計算
| 工種 | TF | クリティカルパス? |
|---|---|---|
| A | 0 | ✓ |
| B | 0 | ✓ |
| C | 0 | ✓ |
| D | 2 | - |
| E | 0 | ✓ |
| F | 0 | ✓ |
クリティカルパス:A→B→C→E→F(全46日)
工種D(基礎型枠)はTF=2日の余裕があります。最大2日遅れても工期に影響しません。
建設現場でのCPMの使い方
使い方①:工期遅延リスクの管理
週次でクリティカルパス上の工種の進捗を確認します。遅れが見えた時点で、資源(人員・機械)の追加配置や並行作業の検討ができます。
使い方②:リソースの集中配置
TFの大きい工種(D工種の2日のような余裕がある工種)は、人員を一時的に減らしてもよいです。クリティカルパス上の工種に資源を集中することで、限られた人員で工期を守れます。
使い方③:工期短縮の優先判断
工期短縮が必要な場合、クリティカルパス上の工種を短縮しなければ効果がありません。TFの大きい工種をいくら短縮しても、工期は変わりません。
使い方④:発注者への工期根拠の説明
「なぜこの工期が必要か」をクリティカルパスで説明することで、発注者への説明責任を果たせます。工期変更が発生した場合の根拠資料にもなります。
よくある質問
Q. CPMの計算はツールなしでできますか?
A. 工種数が10以下の単純な工事なら手計算も可能です。20〜30工種を超えると手計算は現実的ではないため、ADMネットワーク工程表ツールを使うことを推奨します。Con-Scheはクリティカルパスを自動計算します。
Q. バーチャートとCPMを両方作る必要がありますか?
A. CPMで工程を計算し、その結果をバーチャートに変換して提出するという使い方が一般的です。CPMで論理関係・工期を設計し、バーチャートで見やすく表示する役割分担です。
Q. クリティカルパスは工事中に変わることがありますか?
A. 変わります。ある工種が遅れると、それまでクリティカルでなかった経路がクリティカルになる場合があります(クリティカルパスのシフト)。工事中は定期的にCPMを更新することが重要です。