Notes

2026年6月4日

なぜ顧客管理の土台に Notion を選んだのか。導入時に感じた壁と、それが下がった理由

顧客管理の仕組みを自作する土台に Notion を選んだ理由を、導入時に感じた壁(自分で組む手間、関数の習得コスト)と、AIを操作するCLI型ツールの登場で壁が下がった実体験から掘り下げます。

#建設AI#AI活用#Notion#顧客管理#CRM

先日、弊社(建ログ)が高価な専用ソフトを入れる前に、Notion と Google Apps Script という手元の道具だけで顧客管理の仕組みを自作してみた、という話を書きました。本コラムでは、その続きというより「背景」にあたる部分——そもそも、なぜその土台に Notion を選んだのか——を掘り下げたいと思います。

道具選びの理由は、地味なようで、続けられるかどうかを大きく左右します。同じように自社で何かを仕組み化しようとしている方の参考になればと思い、正直に感じてきたことを書きます。


きっかけは前職での「集約できる柔軟さ」への期待

実は、Notion を業務に取り入れようとしたのは今回が初めてではありません。前職の大手ゼネコンにいた頃にも、Notion を使ってみて、導入を急いだ時期がありました。

当時、業務に関する情報は、いろいろな場所に散らばっていました。それを一か所に集約できる柔軟さに、可能性を感じたのです。Notion は、メモも、表も、データベースも、同じ場所に自由に組み合わせて置けます。「ここに集めれば、探し回らなくて済むのではないか」——そう考えて、前のめりに使い始めました。

なお、Notion(ノーション)とは、文章・表・データベースなどを一つの場所で扱える、プログラミング不要で使えるツールです。具体的な機能や料金プランは変動するため、本コラムでは細部に踏み込みません。検討される際は、各社の公式ドキュメントをご確認ください。


しかし、続けるうちに「壁」を感じた

ところが、使い続けるうちに、いくつかの壁を感じるようになりました。

壁その1:自分で組み上げる手間

一つは、地味な手間です。ページを自分で更新したり、データベースを一から構築したりする作業が、思った以上に負担でした。

Notion は自由度が高い分、「どんな箱を、どう並べて、どう繋ぐか」を自分で設計しなければなりません。決まった型が用意された専用ソフトと違い、白紙から組み上げる前提の道具です。その自由さこそが魅力なのですが、忙しい日々の合間に少しずつ組んでいくのは、正直なところ根気が要りました。

壁その2:関数(フォーミュラ)の習得コスト

もう一つが、計算式の壁です。

Notion には「フォーミュラ」と呼ばれる機能があります。これは、Excel の関数に近い、計算や条件分岐を書ける仕組みです。たとえば「最後に接触した日からの経過日数」を自動で出したり、複数の項目を組み合わせて表示を整えたり、といったことができます。

便利なのですが、使いこなすには習得が必要でした。思った通りに動かすために書き方を調べ、試し、直す——その学習と調整のコストが、正直あったのです。

結局のところ Notion は、柔軟だけれど、自由度が高い分、自分で組み上げる負担も大きい道具だと感じていました。可能性は感じるのに、その可能性を引き出すまでの距離が遠い。それが、当時の率直な印象でした。


変化:AIを操作する「CLI型のツール」の登場

そんな印象が変わってきたのは、ここ最近のことです。

きっかけは、AIを直接操作できるCLI型のツール——いわゆる「AIコーディングエージェント」と呼ばれる類のもの——が登場し、広く使えるようになってきたことでした。CLI(コマンドラインインターフェース)とは、文章で指示を打ち込んで操作する形式のことです。難しそうに聞こえますが、要は「やってほしいことを言葉で伝えると、AIが実際の作業を進めてくれる」道具だと考えていただければ十分です。

これによって、先ほど挙げた「壁」だった部分を、AIに任せて進められる機会が増えました。

  • データベースの設計を相談しながら組んでもらう
  • 関数(フォーミュラ)の組み立てを手伝ってもらう
  • ページの作成といった、手数のかかる作業を肩代わりしてもらう

かつて自分で根気よくやっていた部分を、AIと相談しながら進められるようになった。これは、私にとって大きな変化でした。

加えて感じるのは、Notion と AI の相性(親和性)の良さです。Notion はもともと、情報を整理された形(構造化された形)で扱う道具です。だからこそ、AIに「こういう構造で土台を組んでほしい」と指示を出しやすく、AI側も扱いやすいように見えます。自由度の高さという、かつて負担に感じた性質が、AIと組み合わさることで、むしろ活かしやすくなってきたと感じています。

ここで一点お断りしておくと、この種のAIツールは各社から複数提供されており、機能も料金も移り変わりが速い領域です。特定の製品を断定的に推すことは控えます。検討される際は、やはり各社の公式ドキュメントをご確認いただくのが確実です。


この変化が、顧客管理の仕組みづくりにどう効いたか

今回の顧客管理の仕組みも、こうした変化の上に成り立っています。

専門的なプログラミングの知識が少なくても、「こういう情報を、こう分けて、こう繋ぎたい」という意図さえ持っていれば、その土台を形にしやすくなってきました。先のコラムで紹介した「会社・担当者・案件・接触履歴」の繋ぎ方や、経過日数などを出すための計算式も、AIに相談しながら組み立てた部分があります。

そして、これは自社の中だけの話にとどまりません。建設業のお客様に対しても、「AIに任せてページやデータベースを用意し、運用していく」というやり方を、以前より提案・提供しやすくなったと考えています。専用ソフトの導入に踏み切れずにいる中小の建設会社にとって、入り口のハードルが下がってきた実感があります。


留意点:AIは「組み立てを助ける道具」

とはいえ、良いことばかりではありません。中立に、留意点も書いておきます。

AIに任せきりにしてしまうと、中身を誰も把握していない状態に陥る懸念があります。土台はできたけれど、どういう構造で、なぜそう作ったのかを、社内の誰も説明できない。これでは、前回のコラムで触れた「属人化」とは別の形で、同じように引き継げない仕組みになりかねません。

また、AIの出力が常に正しいとは限らないため、組み上がったものを人が確認する作業は、やはり必要です。

ですから、AIはあくまで「組み立てを助けてくれる道具」だと捉えるのが、ちょうどよい距離感だと考えています。何を、どう管理したいのか——その設計の意図は、人が持っておく。そこさえ手放さなければ、AIは手間のかかる作業を大きく肩代わりしてくれる、頼もしい相棒になり得ると感じています。


道具を選ぶ理由は、突き詰めると「これなら続けられそうか」に行き着くのだと思います。かつて壁を感じた Notion を、今あらためて土台に選んだのは、AIという相棒の登場で、その壁が自分にとって越えられる高さまで下がってきたからです。同じように道具選びで迷っている方の、一つの判断材料になればと思い、背景をまとめました。

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